スタッフインタビュー第3弾 岡村公平(キャラクターデザイン・総作画監督)×大塚芙由紀(色彩設計) | SPECIAL | 『二十世紀電氣目録-ユーレカ・エヴリカ-』
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スタッフインタビュー第3弾
岡村公平(キャラクターデザイン・総作画監督) × 大塚芙由紀(色彩設計)
――本作のキャラクターデザインは普段とは違う形で作られたと聞きました。
岡村通常は線画が出来上がってから、色彩設計の方が色を作るという流れなのですが、着物柄の完成のニュアンスを掴むため、本作では僕の方で仮色を塗ったデータも大塚さんに渡して、そこから色を作ってもらいました。大塚さんに聞きたいんですが、このやり方どうでしたか?
大塚カラーバランスを考えてデザインされていたので、線画状態だけでは出せないうまみがあったと思います。やりにくいとかはなかったですよ。
岡村僕がつけた仮色にイメージが引っ張られたりとかは?
大塚特になかったです。このパーツ同士は同じ色にしたいんだなとか、繋がりを考えてこう描かれてるんだなとか、参考として見させてもらいました。でも実は、稲子以外のキャラクターはあまり仮色を見ないようにしていました(笑)。というのも、太田監督が“既視感のないもの”を望んでいたので。キャラクター間や作品全体のバランスを整える際も、岡村さんの仮色は封印して、既存の作品や、流行りのものからも影響を受けないように、あえて情報をシャットアウトしました。岡村さんにも「仮色は見ないで良いですよ」と言われてたので(笑)。
岡村自由にやってもらえたので、僕としてはむしろよかったです(笑)。
――各キャラクターの色はどのように決まったのですか?
岡村喜八は赤、稲子は青、規子は緑、洋輔は白、健吾は……地味な色って太田監督が言ってましたね。清六は色が決まるまで、何色か試した記憶があります。赤と白の2色にするか?とか。
大塚清六はとにかく「カリスマ」にしたいという希望でしたね。太田監督が「太陽にしたい」って。それで最終的にオレンジになりました。あとこの色を作ってる時に「清六の着物の色を左右で変えませんか?」って私が提案したんですよ。背中に一本線を描くだけなので、柄を入れなくても塗り分けで派手にできますよって。
岡村なるほど!と思って、それから僕は柄を足しました(笑)。
大塚彼岸花が足されるとは思いませんでした(笑)。
岡村自分で足しといてなんですけど、大変でした……。
大塚(笑)。岡村さんは演出の目線からも意見をくれました。清六の着物について、カメラを置く位置でも色の見え方が変わるから、自分が演出するなら画面の印象自体が変わってしまうので扱いづらいな、とか。
岡村そんなかっこいいこと言ってました?
大塚言ってましたよ(笑)。その視点はなかったので、たしかになと思ったんです。細かい部分まで気づいてもらえて、ありがたかったです。
――色彩設計に関して、これまでの京アニ作品と違うポイントはありますか?
大塚本作は「奇譚」がテーマにあったので、“汚し”や“ちょっと不気味”の表現のために、影色の作り方が特殊になっています。いつもならベースになる色に対して彩度を上げながら明度を下げ、色温度を調整し、きれい目な影色を選ぶことが多いです。でも本作はあえて彩度を落とし、色温度も青混じりに調整しました。肌の色も他の作品だときれいに見せるために血色を残すことが多いんですけど、太田監督から「今までの作品は忘れてください」と言われたので、彩度を落とし、青みなどを加えました。結果として特殊だけど透明感のある肌色になったかなと思います。時間帯や場所ごとに色を変更する「色変え」という作業でもそういう調整をしていて、そこに撮影処理を加えてもらうことでちょっと煤けた汚れた感じを出しています。
――お互いにこだわりを感じた部分はありますか?
岡村稲子たちの学生服ですね。大塚さんが当時の時代のことを調べて「この時代は各自で仕立てるはずだから各キャラで黄色を変える」と言い出して。太田監督も「そこまでしなくていいけど、大塚さんがやるならどうぞ」って(笑)。
大塚そうですね(笑)。当時の学校では「この色の着物を制服にします」という指示しかなかったようなので、それぞれの家庭で布を買って着物に仕立てていただろうな……と。今回は参考資料として写真が少なく、もしあってもカラーではなくて。ですので、資料として文章を読むことが多かったのも特徴的でした。
岡村僕も色々調べました。当時は帽子が流行っていたらしく、当時の写真を見ると男性はだいたい帽子をかぶっているんですよね。それを参考に男性モブに帽子をかぶせたりしました。あと今までの京アニ作品だと作品性に合わせてモブのキャラクターもイケメンと美少女になりがちだったんですが、本作はそうならないようにしました。体格もバリエーションを増やしましたね。
大塚内国勧業博覧会の群衆はかなり特徴的ですよね。岡村さんから上がってくるものにすごい熱量を感じてました。
岡村ありがとうございます。
大塚あと制作初期にハイライトを入れてくださいってお願いした記憶があります。室内とか影中になることが多い作品だったので、ベタ塗りのノーマル色と影色だけだと背景とキャラクターがいまいち馴染まなくて。キャラクターの縁に照り返しのような色をもう一色入れると背景との馴染みが良くなるので、作画でハイライトの縁取りを入れてもらいました。
岡村それで線数が増えて……、着物の柄の上にもハイライトが乗って大変なことになりました(笑)。
――お二人が考える『二十世紀電氣目録-ユーレカ・エヴリカ-』らしさとは?
岡村「太田監督ワールド」を全面的に出すことです。太田監督のラフや修正指示にはよく変な顔が混じっているんですが、他作品ではあまり使えないところがあります。例えば『響け!ユーフォニアム』シリーズでキャラクターに歯が描かれることはあまりないですが、太田監督が演出を担当した時に修正で歯を入れてきたことがあって、これは使えないぞって(笑)。逆に本作はそこが存分に発揮できる作品でしたね。
大塚第1話の清六の変顔は初めからすごかったですよね。あの歯も最初実線だったんですけど、実線だと可愛くなくて。
岡村ちょっと怖かったです。
大塚それで仕上げの方で歯茎を色トレスに変えて、かわいいと気持ち悪いのバランスをとりました。
岡村でも歯の描写はアニメーターには評判良かったです。第1話の健吾のカットを担当したスタッフが「アニメーターになって初めて歯を一本ずつしっかり描いた!」って喜んでました(笑)。需要あるんだなって思いました。
大塚(笑)。太田監督は絵コンテでも歯を描かれてました。
岡村変顔も含め、太田監督が今までの作品で「やめてください」と言われてきたことを全部やってたんじゃないかな。
大塚第1話で画面が白黒になるところの稲子も、絵コンテの時から変な顔だった記憶があります。でも太田監督は気持ち悪くしようと思って描いてないんですよね。そもそも気持ち悪いと思ってないというか。愛がある。
岡村そう、ちゃんと太田監督なりに可愛くしようとしてるんですよね。
大塚それが「太田監督ワールド」の肝なのかなと思います。
――前回の対談では岡村さんからクリエイターを志す方へのメッセージをいただきました。大塚さんからクリエイターを目指す方に伝えたいことはありますか?
大塚本作を振り返って思ったのは、“楽しみながら深掘りできる力”と“それをアイデアとしてストックしてすぐに取り出せる力”が重要だということです。色作りのテクニックは経験を積めばどんどん上がります。それよりも登場する道具の仕組みを知ったり、使われてる色の意図を考えたり、映像やポスターを見てなぜ素敵だと思うのかを日頃から考えることが大切です。深掘りして、そこでストックしたものをアイデアとして仕事の中で取り出しながら監督やキャラクターデザインとやりとりする。そのやりとりができれば相乗効果でいいものができていく。真っ白な画面を目の前にして色を付けていけるようになるには、それが必要だと思っています。
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