スタッフインタビュー第7弾 浦畑達彦(シリーズ構成)×鈴木貴昭(世界観設定) | SPECIAL | 『二十世紀電氣目録-ユーレカ・エヴリカ-』

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スタッフインタビュー第7弾

浦畑達彦(シリーズ構成) × 鈴木貴昭(世界観設定)

“世界観設定”は、物語をより面白くするためにある

――どのように作品の方向性を考えていったのでしょうか?

浦畑電気を際立たせるためには、そもそも電気が普及していない世界にしたほうがいいだろうというところから出発しました。いわゆる「スチームパンク」の世界ですが、蒸気が発達した、ある種、オリジナルの世界を構築するのならば、鈴木さんを呼ぼうと思ったんです。そこからは脚本もお願いすることになり、ほぼずっと一緒に作業してきました。

鈴木実は、私は浦畑さんより前に一度お声掛けがあったんです。2018年のアニメ化発表の少しあとくらいですね。ただ、企画が一度保留になり、無くなったのかなと思っていたら、あらためて浦畑さんから連絡をいただきました。前に少しお手伝いしていたので、大丈夫ですよとお答えしたのを覚えています。

――今回、世界観を構築するにあたって、最初に考えたことは?

鈴木浦畑さんは、スチームパンクとエレクトリックパンクを対比させたいとおっしゃっていました。電気は今では当たり前のものですが、それが当たり前ではない世界を作りたい。そうでないと、あの世界における喜八と清六の違和感が出てこない、と。そういう話があったので、では蒸気が発達した京都にしたらどうなるだろう、と考えていきました。

浦畑僕と鈴木さんの間で共通している考え方があって、それは世界観というものは基本的に物語に従属するという考え方ですね。面白い話を作るために世界観があるんです。ですから、まず面白い話を考えましょう、その上で、それが活きる世界を作りましょう、という前提がありました。

今回で言えば、二十世紀電氣目録を浮き立たせるための物語を考え抜いた結果、蒸気の世界を一生懸命作っていくことになりました。そういう意味では、物語と世界観は従属関係でもあるし、表裏一体でもあるんです。さらに、世界観が構築されてきてから物語が生まれることもありました。

鈴木基本はドラマありきなんです。監督と浦畑さんたちがキャラクターとドラマをきっちり作り、その横でキャラクターたちが一番魅力的に見える世界を私が作っていく感じですね。そうすると、太田監督が「こんなのはどうでしょう」と新しいアイデアを出してくださるんです。じゃあ、それをやるならこういう世界にしたほうがいいと思いますと、こちらもまた新たに提案して世界観を構築していきました。

――監督とのやりとりで具体的に深まった設定を教えていただけますか?

鈴木たとえば、京都の街全体の設定ですね。蒸気と煤煙に包まれているとするなら、空が暗くて見えないから、少しでも明るくするために建物と建物の間に布を張って景観をよくしているという設定はどうか、とか。あるいは、蒸気の管が通っている世界だとすれば、そこから水が垂れるので足元が悪くなるはず。だったら、みんなブーツを履いているほうが理にかなっているよねと、そういうふうに設定を深めていきました。

浦畑そうやって世界が現れてくると、物語も生まれてくるんですよね。物語後半の展開も、世界がある程度見えてきたことから出てきました。物語ありきで世界が生まれる場合もあれば、世界が生まれることで物語が生まれることもあるんです。

鈴木物語と世界観は、自転車と補助輪のようなものですね。特にTVアニメ『二十世紀電氣目録-ユーレカ・エヴリカ-』のようなビジュアルも大事な作品だと、脚本を作っていくときに、一緒に世界も作っていかないとギミックが入れられないんです。

浦畑やっぱり物語に世界観のギミックを絡ませたいですからね。特に今回は、“電氣”のアイデアが重要になってくるので、脚本側のアイデアから入る場合もあれば、どうすれば成立するかという世界観側から寄せていくこともありました。

蒸気の時代に至る“数百年”の歴史を創造

――電氣目録に書かれている内容については、どこまで考えられているのでしょうか?

鈴木「電氣目録には何が書いてあるのか、何が再現できるのか」は、監督も気にされていたので、「こういう発明もあるのでは?」と、こちらである程度準備しておきました。それが採用されることもあれば、シナリオでまったく違うアイデアが出てきて、それを目録に入れることにしたパターンもあります。

浦畑鈴木さんは、こちらの話をちゃんと聞いて取り入れてくれるんです(笑)。

鈴木もちろん何ができて、何ができないかについては、ある程度レギュレーションがありました。ただ、シナリオ側から「こういうことをやってみたい」というアイデアが出てくるので、「こうすればできますよ」と、その場で解決策を提案することもあります。無茶振りも結構ありましたが(笑)、楽しくできました。

――明滋という架空の時代を作るにおいて、何か大きなルールはあったのでしょうか?

鈴木まず、年表を作る作業がありましたね。だいたい1600年ぐらいから物語の時代までの年表を作って、あの世界がどうしてああなったのかを考えました。電気が発達せず、なぜ蒸気があそこまで発達したのか、三添商店がなぜあれほど大きな会社になったのか。三添洋輔の父親は誰で、その先祖は何者なのか、何をやったからあそこまで大きくなるのか。そういう歴史も全部作っていきました。

蒸気の発達と、それによって何ができるのかまでは作っているので、そのレギュレーションの中であれば、逆に何をやってもいいんです。電気についても、当時の技術力で何ができるのかを考えていたので、「こんなことをやりたい」と提案されたら、それを成立させるための条件や過程を提示するようにしていました。

浦畑鈴木さんは世界観を精緻に作ってくれるのですが、物語サイドやキャラクターサイドが「やっぱりこうしたい」と無茶振りをするので(笑)、どこかのピースが欠けて組み直しになることもありましたよね? 気がつくと、かなり前のほうから組み直すようなことも起きるんです。

――また、今回はシナハン(シナリオハンティング)も行われたとうかがいました。

鈴木ストーリーに明確に関わる、琵琶湖疏水に行ってきました。

浦畑監督も含め、スタッフで疏水船に乗ったんですよね。疏水の最終的な到着地点は、今でいう平安神宮や京都市動物園の辺りになります。作中では、その辺りに三添パークがある設定なんです。疏水船にも乗りましたし、最終的な決着にもつながる竪穴のようなところも取材しました。本当にあるんだと驚きましたね。

鈴木これを使いましょうという話をしながら見ていきましたよね。

浦畑シナハンをすることでストーリーが生まれることはよくありますが、今回は特にその恩恵が大きかったですね。

鈴木もう少し設定寄りの取材もしたかったので、疎水船に乗った後、近江八幡にも行きましたね。実際に建物や街並みを見てまわり、建物の構造を確認すると、キャラクターがどこをどう歩くかがよくわかるようになるんです。それから、毎週京都のスタジオでシナリオ打ち合わせをしていたので、早めに行って午前中は街を歩き、午後から打ち合わせということも個人的にしていました。打合せの前日に京都に行って回ることもありましたね。使えそうな場所を事前に見ておいたんです。

浦畑僕も同じですね。京都で打ち合わせがあるときは、早めに行っていました。京都は本当に歩ける街なんです。たとえば伏見の酒蔵があるあたりから、喜八たちがいる新京極辺りまでも、少し時間はかかりますがちゃんと歩けます。京都は大都会でありながら、だいたいどこへでも歩いて行けるサイズ感で、それをあらためて実感しました。

鈴木サイズ感はちゃんとわかっていないといけないんですよね。シナリオで「ここからここへ行く」と書いても、本当に行けるのかという問題が出てきます。実際に歩くと、その距離感がちゃんと認識できるんです。

――シナハンは、だいたいどの段階で行われるものなんですか?

浦畑作品によってバラバラですね。シナリオに入る前に行うこともあれば、シナリオに入り始めたタイミングで行うこともあります。今回に関しては、シリーズ構成ができあがり、序盤に必要なものがある程度見えていて、中盤以降をどうするかという段階だったと思います。

鈴木疏水船に乗れる時期が限られているのも大きかったですよね。

浦畑そうですね。疏水船は春と秋の短い期間だけなので、そういったスケジュール次第なところもあります。今回は秋にタイミングよく乗ることができました。

喜八をはじめとする登場人物たちの「清六離れ」の物語

――物語序盤は、丁寧に描かれつつもテンポが速く、さまざまな要素が詰まっていました。序盤から大きく物語を動かしていこうと考えていたのでしょうか?

浦畑そうですね。喜八が二十世紀電氣目録に出会い、それがどういうものかがわかり、電気の世界を作っていくと考えるまでが、最低限、第3話までにやっておきたいことでした。ある意味、そこからが物語のスタートなんです。僕としては内容を盛ったというより、物語を動かすために必要なものを一生懸命入れたら、あれだけいっぱいになってしまったという感覚です。

――太田監督とはどのようなやりとりがあったのでしょうか?

浦畑太田監督は、すごく独特のイメージを持っている方なんです。「こういうことをしたい」という発想が、斜め方向からバーンと来るんですよ。

鈴木本当にそういう感じで来ますよね(笑)。漫画を描いてきたり、イメージビジュアルを持ってこられたりするので、それをどうシナリオや設定に落とし込むかを常に考え続けていました。

浦畑特に洋輔のキャラクター性や行動については、監督の持っているイメージがすごく強かったですね。洋輔には「こういうことをさせたい」「させたくない」という提案がたくさん出てきました。特に最初の頃はストーリーのためのキャラクターというよりも、監督の中にある洋輔のキャラクター性がストーリーの中に入り込んでくるような感じだったんです。

もちろん洋輔に限らず、稲子や喜八にも「見せておきたいこと」「させないこと」があり、同時に目録がキャラクター間で移動し、その意味がわかってくるというストーリーがあったので、最初はなかなか物語が収まらなかったんです。ですから、たくさんのものを詰め込んだというよりは、試行錯誤してようやく収まったというのが第3話までの流れでしたね。

――第4話以降は、発明品を軸にしたエピソードが続きました。「電氣縁結び」やバンド回など、面白いエピソードがたくさんありました。

鈴木「二十世紀電氣目録」がどういうものであるか、どんな発明があるかを中盤までに見せておきたかったので、基本は発明品で何をやるかを軸に考えていきました。

浦畑そういう意味では、1クール作品ではありますが、1年もののTVシリーズに近い感覚もありました。1個の発明品や1個のひみつ道具でストーリーが発展する作品のイメージですね。シリーズ全体で見ると、「えっ?」と思うような振れ幅がある、そういう自由度の高さがありました。

鈴木最初はもう少しフラットな物語を上げたところ、監督がより大きい振れ幅のアイデアを出してくださることもありましたよね。上に触れれば下にも触れるので、全体の振り幅が大きくなっていきました。

――第7話からは、喜八と稲子の物語、洋輔たち大人組の物語、そして清六の過去も入り、物語が一段ギアを上げた印象がありました。中盤以降は、どのようなことを大事にされましたか?

浦畑喜八と稲子はここまで少しずつ成長してきましたが、その成長がより表立って見えてくるのが第7話以降です。二人とも自分の成長や変化に気づいて、自分自身と自身を取り巻く状況をさらに変えようとしていきます。そういう流れを意識しました。

鈴木私も浦畑さんの第7話を受け、第8話では喜八と稲子をもっともっと大事に描こうと思いました。第8話を書き上げたときに、浦畑さんから「面白かった」と言われたのがすごく嬉しかったです。

浦畑本当によかったです。二人が一緒に探索するところに、今までとは少し違う関係性が出てきたなと感じました。

鈴木一歩進んだ感じですね。それぞれの思っていることが一歩進んで、うまく第9話にバトンをつなげられたかなと思っています。

――喜八が洋輔に電氣目録を渡しましたが、喜八と洋輔では清六に向ける目線が違っているようにも感じました。

浦畑喜八の中には、兄・清六に対する信頼と反発の両方があります。ここまでは、兄とのつながりの象徴である電氣目録が彼にとって大事なものでしたが、稲子と行動を共にすることで、少しずつそれが変わってきました。稲子が喜八のためにと考えるようになったのと同じように、喜八もまた稲子のためにと思うようになった。電氣目録や自分の夢よりも、さらに大切なものを知ろうとしている段階なんです。それが表れたのが、喜八であれば電氣目録を洋輔に渡そうとすること、稲子であれば洋輔との結婚を受け入れることだったのだと思います。

鈴木やっと兄離れをし始めたというところですね。喜八に限らずですが、清六はよくも悪くもみんなを引っかき回していますからね(笑)。

浦畑そういう意味で、この作品は清六離れの物語でもあります。稲子以外の主要登場人物は、何かしら清六に囚われているところがあるんです。

――ただ、洋輔だけはまだそこから離れられていませんよね。

浦畑そうですね。洋輔にも清六離れをしなさい、という話ではあるんです。でも、彼自身は離れる気が絶対にない。

鈴木「僕は清六がいたからここにいるんだ」という人ですからね(笑)。

浦畑清六離れをしてきている喜八と、そこにとどまっている洋輔が対比になっているんです。喜八は少しずつ清六から離れ、稲子のために動けるようになっていく。一方で、洋輔は清六に強く引っ張られ続けている。その違いは、かなりはっきりと見えてきたかなと思います。

――では最後に、第10話以降の見どころを教えていただけますか?

鈴木ここまで敵対関係にあった喜八と洋輔が、同じ目標に向かって動いていきます。なぜそうなるのか、それがこの後の見どころになると思います。

浦畑電氣目録とは何なのかが少しずつ見えてきましたが、まだ隠されている謎があります。それが第10話以降の大きな起点になり、さらにもう一段階ギアが上がると思いますので、ぜひ最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。

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