スタッフインタビュー第5弾 石原立也(演出)×藤田奈緒子(動画)×松村元気(動画検査) | SPECIAL | 『二十世紀電氣目録-ユーレカ・エヴリカ-』
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スタッフインタビュー第5弾 “動画”から紐解く【バンド】&【劇画】制作秘話! “動画”から紐解く 【バンド】&【劇画】制作秘話!
石原立也(演出) × 藤田奈緒子(動画) × 松村元気(動画検査)
――第6話はいわゆる「バンド回」でしたが、どのような点にこだわって制作されましたか?
石原僕の感覚では「バンド回」というよりも実は「部活回」に近かったです。部活ものってキャラクターの成長を描きやすいんですが、今回の第6話でも稲子と甚右衛門の関係性を意識して、キャラクターの成長に焦点を当てていきました。もちろん太田監督のこだわりもあったので、それも表現しています。特に演奏中の稲子の心情については監督から細かく指定されていたので、そこはしっかり拾っています。これは演奏シーンだけでなくバトルものにも言えることですが、そこに“キャラクターの心情”が乗っていないと見ていて面白くないんですよね。その点で監督が先に心情の流れまで考えてくれていたのはありがたかったです。
松村第6話の演奏シーンは、動画セクションとしても髪の揺れなど動きのリアルさには気を付けて描きました。
藤田ただ動かすだけではなく演奏しているように見せないといけないので、動画作業としても演奏シーンは日常シーンよりも断然気を遣います。昔の作品では演奏シーンの最中に回想を入れたりして調整していたと思いますが、今回はずっと演奏しているので気は遣い続けていましたね。
石原でも、アニメ『響け!ユーフォニアム』シリーズ(※1)(以下、『ユーフォ』)に比べたら全然ましだったでしょ?
藤田それはそうですね(笑)。
松村単純に楽器の数も違いますが、管楽器とギター系の楽器でも全然違いますからね。管楽器は、ここを押さえて、ここを離して、など複雑な動きが多いので。
藤田そうですね。ギターの場合、動き自体は割と単調です。今回も細かいところは色々動いていましたが、それでも『ユーフォ』と比べれば……と思って頑張りました(笑)。
松村でも今回はオリジナルの楽器だったのでまた違った難しさはありましたね。マイクやドラムなど、設定と原画を見比べながら、奮闘しながら作画していました。
――この話数では劇画風のシーンも印象的でした。
石原劇画風にしようということは早い段階で決まっていました。制作に入る前には、線のかすれ具合なんかを話し合ったよね?
藤田そうですね。「どういった感じの映像にしたいですか?」と聞いたところから始まったと思います。線と線の間の隙間をあえて見せる粗さみたいなアナログ特有の表現は簡単には出せないところもあるので、石原さんが目指している方向性を確認したくて。
石原今のアニメ制作ではパソコン上のデジタルツール(バケツツール等)で流し込んで色を付けるので、線を途切れないようにしっかり描く必要があるんです。その中で今回のようなかすれた線にして大丈夫なのかという問題もありました。
藤田そういった観点も含めて、ペイントセクションや美術背景セクションも集まって、みんなで話し合いながら方向性を決めていきました。
松村色と言えば、このシーンは色数をあえて制限していますよね。その話を聞いたときは「確かに!」と驚きました。
石原今はパソコンでいくらでも色を作れるんですが、セルアニメ時代は数百色の色味しか使われていませんでした。でも僕はそれが悪いことだったとは思わなくて。好みの話になってしまいますが、制限があるからこその美しさがあると思っています。なので今回もその色味の範囲内で作りたいとお願いしました。
藤田石原さん自身も、昔はセル塗りをしていましたよね。
石原そうだね。京都アニメーションは、セルを塗る仕上げ(ペイント)の仕事から始まった会社なので、創業当時、若いころは僕もセルを塗っていました。
藤田今回の表現もセルアニメの時代を知っている石原さんだからこそ、というのは感じていました。
――このシーンの多くは若手の動画スタッフにも担当してもらったとうかがいました。
藤田そもそも今回のような技法の経験者は、私の世代でギリギリ、さらに下の世代の松村くんは経験したことがないものでした。そういう画風を若手スタッフにも引き出しとして経験しておいてほしかったんです。線の太さなどある程度の指示はしましたが、各々が考えて、自分の思う劇画を描いてくれていたと思います。『CITY THE ANIMATION』(※2)でも鉛筆ではないペン作画を取り入れましたが、そういった様々な技法に触れて、考えていくことで自ずと実力がついていくのではと考えています。
石原それで言うと、僕は『CITY THE ANIMATION』の線の太い作画の経験があったからこそ、今回の劇画風シーンもいけるんじゃないかと判断しましたね。
藤田そうだったんですね(笑)。
松村『CITY THE ANIMATION』での経験が本作に繋がったように、本作も「こういう手法でも作ることができるんだ」という蓄積になったと思います。劇画風ではなくとも、今後の選択肢が広がったんじゃないかなと思いますね。
――本作全体を通して、動画として大変だったことを教えてください。
松村一番は着物でしょうか。着物の揺れ表現などは動画セクションに委ねられることも多くて。柄を合わせるために、こっそり原画から変えることもありました(笑)。
藤田それは私もありました(笑)。着物でいえばお太鼓(帯の結び方の名称)も大変でしたね。原画から間違っているものもあったり、完成後も修正が多かったです。何より柄が合わないことが多くて。
松村そうですね。動画検査の目線からだと、上がってきた動画の柄の読み取りが大変だった思い出があります。ペイントセクションから「この柄はどうなっているんでしょうか」と指摘をもらうことも多くて。色が付いて初めて、柄のパターンがずれていることに気付くという。
藤田市松模様も大変でした。その上に椿の柄が付いたりして、色を塗ると本来あるべき場所に椿がない、みたいなこともありました。最終的には上手く合わせるしかないんですけどね。
石原本作はそもそもキャラクターのパーツがかなり多かったよね?
松村そうですね。特に稲子は髪飾りが左右両方についているので、どっちを向いてもパーツが多くて(笑)。
――本作を観てクリエイターを志す方もいるかと思います。将来「演出」を目指すなら、どのような勉強や考え方が必要でしょうか。
石原資質については分かりません(笑)。ただ、商業的作品かアート的作品かによって若干の違いはありつつも、観てくださる方に対する“サービス精神”は必要なんじゃないかなと思います。あと勉強としてはなるべくドキュメンタリー作品を見るといい気がします。知識もそうですが、キャラクターの心情をより深く知れるようになると思います。今の時代は好きな動画を見たい時に見られますが、視野を広げる意味では色々なものに触れた方がいいんです。そういう意味でドキュメンタリー作品は様々な職業、境遇の人のことを知る機会になると思います。簡単にまとめるなら「人間に興味を持とう」ということですかね。
――「動画(セクション)」・「動画検査」に求められる資質は何だと思いますか。
松村必要なのは“動き”に対して興味を持って探求していくことでしょうか。特別な勉強法はないですが、動きに興味を持って、実際に描いてみる。そうやって自分の引き出しを増やしていくことが重要だと思います。
石原あとは精密な作業に耐えうる精神も資質としては必要なんじゃないかな。
松村そうですね。同じ絵を何枚も描ける精神も重要な資質です。あと、動画検査になるなら、原画スタッフと同じレベルで動きのイメージを掴めないといけないと思います。作画セクションの最終関門として、そのくらいの覚悟は必要かなと。
藤田世に出る前の段階として、しっかり動いているかを総合的に見ないといけない。その時に必要なのが、松村くんが言っているような探求心だと思います。動画セクションであって、原画がおかしかったらそれを修正するくらいの気概が必要だと思います。あとは石原さんの言う忍耐力も必要です。シーンによってはずっと同じ絵を描き続けることもありますから。こう言うと動画セクションの精神的に大変な面が目立ちますけど、楽しい面もちゃんとあります。だよね?
松村もちろんです(笑)。僕としてはうまく変化させることができた時が嬉しいですね。例えば、キャラクターが動くとき「ここでちょっとスカート揺らしたいな」とか「髪揺らしたいな」と思ったときに、原画の意図を損なわないように違和感なく作画できた時などです。そういう小さな変態性を発揮できると楽しいですね。あと、僕は動画検査が好きなんです。あえて言うなら、ねちねち言うのが好きなんですよ(笑)。もちろん、そのスタッフが成長してくれると嬉しいというのが理由ですが。
石原それはすごく大事なことだと思うよ。言葉は悪いかもしれないけど、僕も『ユーフォ』の久美子を見ていて性格の悪い側面も大事なんだなあって思うことがあって。
松村そんな感じです。動画検査はそれくらいの方があっているのかもしれません(笑)。
藤田動画セクションには大変なことも、楽しいこともいろいろあります。動画というのは縁の下の力持ち的な役割ですが、これからも一番良い動きを追求していきたいですし、良い画面にしていきたいです。このインタビューを読んで動画をやりたいと思ってくれる人が増えてくれると嬉しいですね。
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