スタッフインタビュー第11弾 宮城 良(演出)×佐藤知美(原画) | SPECIAL | 『二十世紀電氣目録-ユーレカ・エヴリカ-』
SPECIAL
スタッフインタビュー第11弾
宮城 良(演出) × 佐藤知美(原画)
――第11話でのそれぞれのお仕事(演出・原画)について教えてください。
宮城演出を担当しました。各話演出は監督の目指している物語を話数単位で形作っていく役割です。また第11話の絵コンテは石原(立也)さんと分担して描いており、石原さんが前半のAパート、僕が後半のBパートを担当しています。Bパートでは喜八が生き埋めになるシーンを軸にして、ハラハラ感や緊張感を出せるようにコンテを描いていきました。
佐藤原画を担当しました。監督ないしは演出の方が描いた絵コンテを絵に起こしていく役割が原画です。絵コンテの情報だけでは演出の意図と原画スタッフのイメージが乖離する場合もあるので、各話ごとに「作画打ち合わせ」を行い、意図とイメージをすり合わせています。また、画面設計も原画の役割の一つです。世間的にはキャラクターの動きを作る役割と思われているかもしれませんが、本当はその前の段階の「どういった画面にするのか」を設計するまでが原画です。
――宮城さんの絵コンテをご覧になって、いかがでしたか。
佐藤個人的な感想ですが、宮城さんの絵コンテは、原画として「ここを担当したい!」と感じる箇所がすごく多いです。おそらく、そのシーンの魅力がしっかり表現されているからだと思います。
宮城僕としても「このシーンはこの原画さんに描いてほしい」と先を見据えて絵コンテを描いているつもりなので、それが伝わっているなら嬉しいですね。でも実際に絵コンテを描いている時は必死なので、そこまでちゃんとできているかは怪しいですが(笑)。
佐藤宮城さんは、原画のエッセンスを大切にされているのも感じます。他の原画スタッフも言っていますが、演出からの修正の際も「もっとこうした方がよくなるんじゃないか」という戻し方をしてくださるので、前向きに修正を捉えられることが多かったです。『響け!ユーフォニアム3』(※1)のときもそう感じていました。
宮城そう言ってもらえると嬉しいです。僕自身も原画を担当するときは「こういう画面にしたい」というプランを持ってやっているので、演出として修正を戻す際にも、できるだけ原画スタッフの意図を汲み取るようにしています。演出としての僕の中にある答えだけが、必ずしも正解だとは思っていなくて。むしろ僕の答えだけで作ったものよりも、いろいろな人の意図を組み合わせた先に出来上がったものの方が絶対に面白くなると思っています。
佐藤とはいえ、あくまで絵コンテから飛躍しすぎないよう注意は必要ですよね。アイデアを乗せていく中でも、その枠は越えてはいけない。なのでコンテを読み取り、その意図を表現していくためには“国語力”が求められるのかなと考えています。
宮城国語力! その通りですね。演出として脚本を読み取って絵コンテを描くにも国語力が必要ですが、原画スタッフにも絵コンテを読み取る国語力が必要だと思います。
佐藤私の場合、暴走してその枠から飛び出していく傾向があると自覚しているので、毎回の作画打ち合わせを大切にしています(笑)。
宮城僕もそうなので、すごく分かります。実はいま公開中の『最終楽章 響け!ユーフォニアム』後編でもありまして。真由が泣くシーンで「熱いものを作ってやろう!」と意気込んだのですが、小川監督(※2)からは「いい作画なんだけどね、ちょっと温度感が違う」と戻されました(笑)。
※2『最終楽章 響け!ユーフォニアム』監督 / 『最終楽章 響け!ユーフォニアム』公式サイト
――佐藤さんは第11話終盤の喜八と洋輔のシーンを担当されました。
宮城特に洋輔の指の動きが記憶に残っています。完成画面を見てすごく感動しました。佐藤さんのアイデアがかなり入っていたと思いますが、ご自身としてはどうですか?
佐藤私としても「スケジュールは絶対死守するぞ」という状況の中で最大限こだわった箇所なので、そう言っていただけてすごく嬉しいです。絵コンテに太田監督からの修正が入っていたカットだったので、「監督はここで色気を出したいんだな」と考えて。洋輔が喜八の顔に手を添えるシーンなんですが、私としても、ここは喜八の顎に洋輔の指を残しておかないと印象に残せないと思ったのでこだわりました。
宮城そう! すごくよかったです!
佐藤ありがとうございます(笑)。これは原画を描くときにいつも心掛けていることですが、絵コンテの中には“印象に残らない方が良いところ”と“印象付けないといけないところ”があると思っています。あのカットは終盤話数の中のさらに終盤で、印象に残さないといけないところだと思いました。なので、絵コンテから外れない範囲で、どうやって印象に残すかを自分なりに考えました。
宮城そういった「自分なりの解釈」を持つことが原画として大切なところだと思います。絵コンテに描かれているものを一度自分の中で解釈し、それを再構築して、アイデアを出していく。それが原画として重要なところかなと。佐藤さんはそういったところを深く考えてアイデアを持ってきてくれると感じます。佐藤さんの原画からはガッツというか、ハングリー精神を感じるんですよね。おそらく、根底にある「自分がこのカットを作っていくんだ」という気持ちが表れているんじゃないでしょうか。
佐藤私は宮城さんこそ「ガッツの人」だと思っているので、宮城さんにそう言っていただけてとても嬉しいです(笑)。
――他に印象に残っているシーンはありますか。
宮城中田(うの)さんが原画を担当した、喜八のイメージシーンでしょうか。
佐藤今回の話数の中でも見どころの一つですね。
宮城喜八が未来などをイメージするシーンは、撮影効果・背景・絵柄が特殊です。それを原画として組み立てるには、幅広い知識が必要になりますが、中田さんはそれらを駆使して上手くまとめてくれたと思います。
佐藤中田さんは私にはない“柔らかさ”を持っている印象です。第6話で稲子がヘドバンをする演奏シーンも中田さんの担当ですが、動きや輪郭、表情などが柔らかくて、活き活きとしたものを描くなと思っていました。私はケイトがドラムを演奏するシーンの担当だったので「これは負けてられないな」と(笑)。
宮城僕も同じです。良いものを見ると「いいね」と思うと同時に「負けてられないな」とも思うんですよね。映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』(※3)のクライマックスで、佐藤さんはカンナがキムンカムイに近づいていくシーンを描かれていて、中田さんはアーザードが最後悔しさを滲ませながら地面を叩くシーンを描いていました。ああいうのを見ると「いいな」と思います。それと同時に「いやでも、僕ならこうするけどね?」みたいなのも思いつつ。でも最終的には一緒に作る「仲間でよかった」って安心するんだよね(笑)。
佐藤そうですね(笑)。
――シリーズ全体を通して、「二十世紀電氣目録-ユーレカ・エヴリカ-」はご自身にとってどんな作品ですか?
佐藤「必死に考える機会になった作品」かつ、「いろいろと新しいことに挑戦させてもらえる作品」でした。先ほど話した第6話のドラムの演奏シーンも、全部をフルコマ(1コマ打ち)にするわけにはいかない中で、どうすればちゃんと演奏しているように見えるのか。動きのタイミングを指示するタイムシートに全部書き出して、計算しながら制作しました。考え、計画してから描くことの大切さを改めて実感しましたね。
その経験は『最終楽章 響け!ユーフォニアム』の滝先生の指揮にも活きています。新しい挑戦があるからこそ、次の作品にその経験を活かすことができるんですね。その意味でも良い作品に巡り合えたなと思っています。逆に悔いが残る部分ももちろんあって、たとえば第11話だと病床の苗子のシーンは今見るとすごく拙くて、恥ずかしいんですよね。特に苗子が起き上がるシーンは原画があと2枚必要だったなと感じています。
宮城今回の苗子や洞窟内での喜八など、ダメージを負っているキャラクターって、ゆっくり喋るから尺が難しいんですよね。なんとか尺を確保しましたが、それでももう少し尺を取ってもよかったのかなとも思いました。でも、ここでは苗子役の浅野まゆみさんがすごくいい演技をしてくださって。
佐藤そうですね。私も「キャストの演技に助けていただいた」と感じました。
宮城僕たちも、そういう一流の演技を念頭に置いたうえで描く必要性を改めて感じました。とはいえ、咳き込むところは難しい原画だったかと思いますが、佐藤さんにはとてもうまく描いていただいたと思います。
――お二人の現在の目標は何ですか?
宮城すごく抽象的になってしまいますが、「面白い作品を作りたい」ですね。今回話したような技術や、これまで培ってきたものを重ね合わせて、面白い作品を作っていきたいです。「もう一度このキャラクターに会いたい!」と思っていただけるような魅力的な作品を。
佐藤私も宮城さんと一緒ですね。それと、もっとたくさんのカットを描きたいです。
宮城分かる! たとえば、『二十世紀電氣目録-ユーレカ・エヴリカ-』のTV放送中のCMでも流れている、KAエスマ文庫のアニメーションCM(以下、文庫CM)を最近担当しまして。僕が『MOON FIGHTERS!』(※4)の演出を担当して、佐藤さんが『草原の輝き』(※5)の作画監督を担当しましたね。本音を言うと「全部自分で原画をやってやりたい!」とも思っていましたが、佐藤さんはどうですか?
佐藤そうですね。限られたスケジュールの中で、私も常に限界までこだわりたいと思っています(笑)。
宮城本作で乗り越えた課題が文庫CMに活きた部分もありますが、その次には文庫CMで出た課題もあって。結局のところ、いい表現にたどり着くためには、次から次へと考えていくしかなくて。どの作品を担当するときも、「キャラクターの魅力を伝える!」という信念を持ちながらメッチャ考えて、その時にできる最大限をぶつけるしかないんです。結果“面白かったよ”と言って貰えればラッキー、“いまいちだった”なら「もっと次は!」という気持ちで、楽しんでもらえる作品を届けられたらと思います。
※4KAエスマ文庫『MOON FIGHTERS!』アニメーションCM / YouTubeで再生する
※5KAエスマ文庫『草原の輝き』アニメーションCM / YouTubeで再生する